ロシアW杯グループBポルトガル-スペインの感想

ポルトガル-スペインというと、お隣同士、ともに強国で、もはやW杯ダービーと言えるのではないだろうか。決勝カードでもおかしくない。

選手の顔ぶれは4年前とさほど変わらず、みなさんお元気なようでなによりです。2年くらい見てなかったらシルバの雰囲気がアトレティコみたいに変わっててビックリ。クアレスマのW杯初出場というのも驚いたが、めでたいことである。

 

波乱の前半

さて、なんでもかんでも監督の交代に結び付けて考えてしまうのだが、立ち上がりのスペインは慎重に入ったのか引き気味で、十分にプレッシャーをかけられないうちにロナウドに前を向かれ、1vs1の局面をつくられてしまった。まだまだ衰えを見せませんねこの人は。

 

傍から見れば最悪の立ち上がりとなったスペインだが、変に慌てることもなく、落ち着いてパスを回し始めた。経験のある選手が多かったし、あまりにも早いゴールだったから時間も十分に残っていた。

 

スペインは中盤の選手がペナルティエリアを取り囲むようにポジショニングしてボールを回していた。この段階でエリア内に入っているのはコスタのみ。仮にボールを失っても鋭いポルトガルのカウンターに備えやすい配置でもある。

 

そこからイスコさん(神)、イニエスタ、シルバが変化を付けて攻撃のスイッチを入れる。深い位置までえぐったり、縦に入れたりした瞬間に、中盤の選手が推進力をもってエリア内に侵入してくる。高い精度と迫力のある攻撃だった。

 

しかし同点ゴールは、放り込んだロングパスと、ペペの高い演技力をものともしないコスタの力強く華麗な個人技であった。サッカーあるある。文脈が感じられない。そんなものは凌駕してしまうのが結果というものなのかもしれない。結果がスペインを勇気付ける。

 

ボールを持って崩そうとするスペインvsきっちり守ってロングカウンターにつなげたいポルトガルという構図ができた。ポルトガルのカウンターは鋭く、サントス監督の下で作り込まれていた。「ボールを奪ってから15秒以内」ですか、理想的でしたね。

 

追加点はそのカウンターの流れから生まれた。大きく後退させられたスペイン。一度スピードダウンしたことで中盤と最終ラインが分離し、DFラインの前のスペースを使われ、ロナウドに強烈な無回転シュートを放たれてしまった。デ・ヘアならセーブできそうではあったものの、ここはロナウドが上回った。

 

美しい後半

後半に入り、早々にスペインがチャンスをつかむ。Jリーグ草創期のような高揚感をもたらしてくれたイニエスタが巧くファウルをもらい、直接狙うにはやや距離があるがゴールほぼ正面でFKを得る。

イメチェンしたシルバが変わらない精度の高いボールをラインギリギリに配球すると、身長差10cmのミスマッチを突いてブスケッツがゲデスに競り勝ち、ゴール前に折り返す。その先に飛び込んできたのはゴメスだった。本当にストライカーというものはいいところにいる。いや、いいところにいるからこそストライカーなのだろう。

 

スペインの3点目は芸術だった。見ていて思わず声が出てしまった。

サイドから中央に入れたボールがクリアされ、こぼれ球という自然を美しい軌道で切り取った。まったくバランスを崩さず、何事もなかったかのようにボールの行方を見守るナチョ。恐らく彼はキックした瞬間に手応え、いや足応えという確信を感じていたに違いない。

 

ポルトガルの3点目もまた芸術であった。高さと安定した配球が強みのウィリアムからペナルティアークにいたロナウドへ柔らかいボールが供給される。ターンを阻止すべく間合いを詰めたピケが思わずファウル。

つま先でのしなやかな助走から放たれた軌跡は、ブスケッツをかすめるようにして、ここしかないというコースへ。すばらです。

 

スコアこそ同じだが、ポルトガルは大会の初戦にして大一番を凌ぎ切り、逆にスペインは勝ち点2とともに、逆境を力に変える機会をも失った。

しかしながら最悪のスタートから立て直し、一時リードまで奪うあたりはさすがにスペインも地力がある。優勝を狙うようなチームは大会の序盤にわざとコンディションを上げずに臨んでいることも多い。まだまだ今後が楽しみである。