サッカーW杯2019決勝T1回戦なでしこジャパン-オランダ戦の感想
2019年6月26日(日本時間)、ルート・ド・ロリアンでサッカーなでしこジャパンvsオランダ代表のFIFA女子W杯フランス2019決勝T1回戦が行われました。日本は先制されたあと、長谷川のゴールで追いつきましたが、試合終了間際にPKを決められ、1-2で惜しくも敗れてしまいました。この試合について、簡単に振り返ってみます。
試合の概要
オランダ | 日本 | ||||||
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55% | 支配率 | 45% | |||||
12 | シュート | 12 | |||||
5 | 枠内 | 4 | |||||
562 | パス本数 | 497 | |||||
82 | パス成功率 | 80% | |||||
3 | CK | 2 | |||||
114km | 走行距離 | 117km | |||||
2 | オフサイド | 1 | |||||
8 | ファウル | 8 | |||||
0 | 警告 | 1 |
FIFA 公式記録より筆者作成
スタッツを見ると、オランダの支配率が思った以上に高く、非常にハイペースで入り、早い時間帯にCKから先制して主導権を握った様子が見て取れます。日本は前半終了間際のいい時間帯に追いつき、後半も決定的なチャンスを多くつくり、盛り返しました。しかし、最後はオランダのワンチャンスの前に沈んだという感じでしょうか。
日本のフォーメーション
日本はグループステージで出場機会が多かったスタメンに加えて、アルゼンチン戦以来の先発となる長谷川が左サイドに入っています。イングランド戦から5日程度リカバリー期間があったので、疲労度はそれほど高くなかったと推察されます。
対するオランダは中盤を逆三角形にした、伝統的な4-3-3の布陣でした。3トップが強力で、トップに高さと得点力のあるミーデマ、左にマーテンズ、右にファン・デ・サンデンです。中盤にはプレイメイカーのファン・デ・ドンクとアンカーで攻撃の起点にもなるスピッツェがいます。
ハイペースのオランダ
オランダは立ち上がりから非常にハイペースで入りました。日本はオランダの激しいプレッシャーの前にパスをうまくつなげず、ミスからショートカウンターを許してピンチを招きます。
前半の早い時間帯にCKを与えると、高さを警戒した日本守備陣の意表を突く形で、ニアに低く速いボールが供給されます。そこに走りこんだマーテンズに杉田が付いていけず、フリックで合わせられて失点してしまいます。余談ですが解説の澤さんが得意にしていたプレーでしたね...。
オランダはアンカーのスピッツェから前線にボールが供給される形で攻撃を展開していました。特にWFファン・デ・サンデンが中に絞って、日本の中盤の間のスペースで受けてから、SBに展開する形が特徴的でした。
日本はラインを高く保ち、きれいにブロックを組んでいました。しかし、アンカーのスピッツェに対してプレッシャーがかからず、前線からコースを限定して網にはめ込むような連動したプレスにはなっていませんでした。歓声もありますが、後ろからのコーチングでコースを切るようにポジショニングを修正できるとよかったのかなと思います。
日本の猛攻
先制された日本でしたが、思ったより冷静で落ち着いて見えました。菅澤が決定的なチャンスを迎えたシーンなど徐々に日本ペースになります。
前半42分、左サイドでボールを奪った日本は杉田からバイタルエリアの菅澤へパスが入ります。落としたところに岩渕が受けてスルーパス。最後は長谷川がGKを見て落ち着いてゴール上隅に流し込みます。今大会でうまくいっている菅澤のポストプレーから岩渕が前を向いて仕掛け、そこに中盤の選手が関わる形で日本が同点に追いつきます。
後半になると、立ち上がりからハイペースで入っていたオランダのペースも徐々に落ち、中盤が空いて日本のペースになります。懸念されたビルドアップに関しても長谷川中心に中盤の選手が間に顔を出して、多少危険なシーンはあったものの、うまくかわしていました。
15分以降は日本の猛攻。岩渕のヒールパスから長谷川のシュート、右サイド深くからの岩渕のシュート、杉田が果敢にゴール前まで上がってバーを叩いたシュート、中島と交代した籾木がタメて三浦が駆け上がり放ったシュート、左サイドからのクロスのこぼれ球を拾った籾木が相手を冷静にかわして放ったシュート...しかし、いずれもGKファン・フィーネンダールを中心に守り切られてしまいました。
最後は攻撃的な交代カードを切ってきたオランダのヴィーフマン監督。交代で入った右WFベーレンスタインの突破からこぼれ球をエースのミーデマがシュート、これが熊谷の左腕に当たってハンド、PK。これをマルテンスが落ち着いてこの日2点目を決め、日本の準々決勝進出は叶いませんでした。
後半は完全に日本ペースだったために、失点するイメージがありませんでした。PKのシーンは本当にこれぞワンチャンスという感じで、たったワンプレーで試合結果が変わってしまう、サッカーの恐ろしさを改めて思い知らされました。
まとめ
自分たちの時間帯に決め切らないと逆に相手に決められてしまうという、サッカーではよくある試合展開になってしまいました。
今大会を通して、世界の女子サッカーは特に守備面でプレッシングが厳しくなっていると感じました。プレッシャーが厳しい状況でなでしこらしい技術やコンビネーションを発揮しなければならないし、決め切らないといけない。そこが課題となったように思います。
若手中心で臨んだとはいえ、決して東京五輪のトライアルという位置づけでは臨んでいないと思います。女子サッカーでは伝統的にW杯よりもオリンピックの方がより重要視されるので、今大会を教訓にさらなる成長を遂げた姿を来年見せてほしいと思います。