ロシアW杯準々決勝ブラジル-ベルギーの感想

事実上の決勝戦ともいえるような組み合わせとなった試合。立ち上がりから両者ともに激しく攻め合う。ブラジルはネイマール、マルセロ、コウチーニョの3人で得意の左サイドからの崩しを試みる。それによって獲得したCKからいきなりチャンスを迎える。

 

チアゴ・シウバが反応したボールはふらふらと浮き上がりゴールに吸い込まれるか、と思われたがポストに当たる。跳ね返ったボールを空中に放り投げられた我が子を抱きかかえるようにクルトワがキャッチ。落ち着きたい気持ちに抗いながら日本戦のラストプレーで見せたようにすかさずカウンターにつなげる。本当に抜け目のない攻撃の起点となる現代のゴールキーパーである。

 

ベルギーのカウンターは攻撃が自慢のブラジル相手にデブルイネ、アザールルカクの3人を常に残すというマルティネス監督の強気の采配が見られた。デブルイネは本当に判断が正確で非常に早く迷いがない。単に思い切りがいいだけとも言えるが、どうもそれ以上に鋭さと正確性が印象に残る。おそらく現時点で世界最高のミッドフィルダーだろう。顔は高校生みたいなのに。

 

オウンゴールで失点したブラジルに追い討ちをかけるカウンターからの強烈なシュートは圧巻だった。マルセロもサイドの選手に気を取られ中途半端な守備となってしまった。

 

時間はやや前後するが、コウチーニョが左45度から放った得意のシュートは、スイス戦では決まったが、クルトワには阻まれた。ああいう得意な形を封じられると攻める側にプレッシャーがかかってくる。前半のブラジルは左サイド一辺倒でムニエとフェライニにほぼ完璧に抑え込まれた。

 

後半に入るとブラジルは選手交代なども含め徐々に攻撃に変化が見られるようになる。ネイマールがエリア内に侵入したりドウグラス・コスタの右サイドからの攻撃も見られるようになった。

 

ただ、やはり気になるのはネイマールコウチーニョの得意なポジションと動きが被っていること。ベルギーはディフェンスライン4人と中盤3人の2 ラインを崩されることなくほとんど完璧な組織的守備を見せた。ミドルシュートも打たせないし、コーナーキックもほとんど与えなかった。

 

唯一意表をつかれたような形になったのが失点シーンだった。レナト・アウグストの中盤からの飛び出しに、コウチーニョがディフェンスラインの裏のわずかなスペースを狙ってピンポイントでクロスを入れた。

 

終盤のネイマールミドルシュートのシーンは少しブラジルの攻撃が停滞していて、集中力が切れていてもおかしくないような、そんなシーンだった。それでもクルトワは集中を切らしていなかった。

 

ベルギーはブラジルがボールを持って試合を支配することを前提に、監督が準備した戦術から守備陣の奮闘、そして主要な選手の圧倒的なパフォーマンスまで、隅から隅まで完璧な試合をした。

 

唯一課題があるとすればブラジルの守備ブロックがきちんとセットされている時には崩せなかった点である。とはいえ日本戦で見せたようにフェライニを使った力技も持っているため、今のところベルギーに死角はないだろう。

 

ネイマールさらば。新しい時代の幕開けが予感される一戦であった。